新産業都市一問一答

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期待する全県への波及効果

 長い間の悲願だった秋田湾地区新産業都市の指定が実現し、今春から本格的な都市づくりがスタートする。しかしながら、私たちは本県の体質を大幅に変えるこの"新産建設"に大きな期待をもつ反面

 (1)県民生活とどんなつながりをもつのか
 (2)農業と工業との関連はどうなのか
 (3)また資金繰りの不安はないのか

…等々、未知の点もあり、素朴な不安感もある。そこで、小畑知事から新産都市建設の構想について平易な説明を求めてみた。



 ◆新産都市指定後初の新春を迎え本格的な都市づくりの作業が開始されると思いますが、ます最初に秋田湾地区新産業都市建設の意義と特色を知らせてください。

知事

 新産業都市指定をめざして名乗りをあげてから三年、ようやく秋田湾地区指定の悲願が実現しました。これも県民一体となったご協力のたまものと心からお礼申し上げます。
 さて、新産業都市は勉方に産業開発の拠点をつくり、勉域格差を解消しようというものですが、秋田湾地区が新産都市に指定されたことは、裏日本、後進県の汚名を返上して県民生活を中央なみの水準に向上させることにもつながるのです。
 いつも私は、東北の日本海側には新潟から札幌まで拠点が全然ないことを残念に思っていたのですが、幸いにも今回、秋田湾地区が東北西部の開発拠点左して認識され、国家的にも位置づけられたわけで、本県にとって非常に心強いことであり、東北としてもその意義はきわめて大きいと思います。
 さきに指定になった全国十三地区の新産都市のほとんどは鉄鋼コンビナートとか石油コンビナートが計画の中心ですが、秋田湾地区は、農業と工業を密着させた農工一体の姿を実現したい考えです。
 またこれと同時に最近めざましい発展をみせている県北の勉下資源開発と結びつけ、二次、三次加工を中心とした化鉱コンビナートをつくり、勉場産業と関連した県独自の新産業都市を実現する計画です。



 ◆指定された勉域は発展することでしようが、それ以外の地域はどうなりますか。全県への波及効果は期待できますか。

知事

 もともと新産都市の建設は、拠点の開発によって全県の水準を引き上げようとするものです。
 秋田湾地区が東北西部の開発拠点であることが正式に国から認められたということは、道路、鉄道港湾等の公共事業に対し、国の強力なバックアップが約束されたことであり、この点でも全県への影響は非常に大きいと思います。
 また、秋田湾地区に大規模工業が形成されることは、県内各市にこれの関連工業、下請工業が拡張されることにつながります。
 こうした発展が、各地域の商業サービス業等の三次産業にも好影響を与え、県内各市に中拠点的役割りが大きく加味されることになります。そして産業と人口の集積が高まれば農村の生産拡大が必要となり、また現在の出かせぎ者も県内の工場などに通勤するということになるでしょう。
 ですから新産都市の建設はひとり秋田湾地区の発展だけでなく秋田県全域のレベルアップ、後進性の脱却につながるものと考えられます。

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新産業都市で人口流出防止



 ◆秋田湾地区薪産業都市建設の設計図はもうできていますか。

知事

 県内各界の代表をもって建設協議会を組織し、ただいま建設基本計画の策定作業を進めているところです。二月中に承認が得られるものと思いますが、功を急がす、無理と無駄のないよう堅実な計画をたてたいと思います。
 計画の基本方針としては、実施期間は昭和三十九年から五十五年までの十七年間。人口は現在の三十万人を五十万人に増加し、工業出荷額は現在の三百二十二億円から五十五年には約十倍の三千五百億円に伸ばすことを目標にしています。



 ◆さきほど秋田の新産都市の特色は農工一体にあるといわれましたが、その具体的な構想は?農家の人たちは、新産都市づくりば工業開発を先行するあまり、農業が閑却されてしまうのではないかという心配をもっているようなので、くわしく説明してください。

知事

 農工一体というのはます第一に、工業都市の建設によって県外に流出する農業人口を吸収するということです。最近県内の人口が急激に減少しており、昭和三十七年などは一万五千人も減っています。これは毎年人口一万人以上の大きな町が一つずつ無くなっていく計算になります。
 そのほか、出かせぎ者が年間四万人もいます。このままでは農村地帯の人口が減るばかりなので中心になる工業都市を建設して、流出する農業人口を吸収しなければならないというのが農工一体の眼目なのです。
 農工一体のいま一つの目標は農産物に対する消費勉を形成することです。
 秋田は東京、大阪など大きな消費地に遠いから、群馬、神奈川、長野などのように野菜を東京へ陸送するようなわけにはいきません。
 ですから地元に肉、卵、牛乳、果物、野菜などいわゆる成長農産物の消費地を作らねばならない。農業の体質改善をはかりながら成長農産物の大消費地をこの秋田湾地区に形成するという考え、これもまた農工一体の観点でやっていくのです。



 ◆次に企業誘致問題ですが、新しい大企業だはを誘致して既存の中小企業は投げやりにされるのではないかという心配もありますが。

知事

 新産業都市建設で大きな基幹産業が起きることによって、必ずいろいろな下請けも出てくるから、新規工場ができることは中小企業のプラスにこそなれ、マイナスにはならないと思います。
 しかしながら、私どもの工場誘致の方針は、新規工場も大事だが既存工場が関連産業を盛んにしていくという形態を考えないといけないと思います。
 たとえば、東北肥料が肥料生産だけでなく、石膏からボードを作るようになっており、東北パルプはパルプの廃液から家畜の飼料を作っており、また秋田石油化学では石油からメタノールを作っているが、さらにそれから接着剤を作ることも可能です。
 そんな具合に既存企業を核として関連産業を起してゆくという方向を強く推進したい考えです。


県内の資源を生かす工業を



 ◆地元優先で、地元の資源を地元資本、地元経営者によって活用するという方向で工場誘致をやるべきだという声もあるようですが、この点についてはどんな方針で進みますか。

知事

 方向としては結構なことです。しかし、この十年間に県内の有志の方々でいろいろ新しい会社を設立していますが、経営が順調なものもあれば、よくないものもあります。
 "地元人による、地元資本による…"といいますが、地元の資本はそう強くなく、企業経験もまた必ずしも抜群というわけではありません。
 県外資本を導入しても、秋田県に落着けば、それは県内の資本と同様です。私どもは県外資本導入をいちがいに排撃するのではなく秋田の労働力を吸収し、秋田の原料を加工し、関連産業なり下請けの事業が増えるなら、積極的に県外資本を導入してもいいと思いますね。



 ◆本格的な工場誘致がこれから始まるでしょうが、大工業地帯建設の成否はこの工場誘致にかかっていると思われます。今後の工場誘致の方針を知らせてほしい。

知事

 工場誘致の根本方針としては、(1)地元消費に結びつく工場と(2)地場の原料を高度に活用できる工場をねらいにしています。
 一例ですが、つい最近までは県内の農家で必要な飼料は東京周辺から買っていました。ところが秋田港付近の臨海工業地帯に日本海飼料会社を山形、青森、秋田の三県の経済連が共同出資で設立して以来、いまでは県内で使用する家畜の飼料はここで製造するようになっています。原料のトウモロコシはクイ、パキスタン、中共から輸入していますが、中共などはむしろ秋田港が距離的に有利ですしこの飼料工場は地元資本で健全経営を続けています。飼料工場の好成績が影響して、飼料を入れる紙袋を作る工場ができ、また農薬工場もできました。この飼料工場の成功にヒントを得て、これからは地元で消費するものに重点を置いて誘致する計画です。
 同時に、もう一つのねらいは県内にある原料を加工する工場を盛んにすることです。県内には豊富な森林資源と県北で産出される莫大な埋蔵量の黒鉱がありますから。
 この県北地方の黒鉱の推定埋蔵量は六千万トンに達し、世界的な銅産地帯になってしまったほどです。この黒鉱を原料にして亜鉛の製錬や銅板や銅線などの二次加工三次加工を秋田湾地区で大きくやりたいと考えています。
 この黒鉱の高次加工のほかに木材加工を柱にする計画です。強大な製材力をもって、外材の輸入を加えた木材産業の振興は、秋田の立地条件を大きく活かすものと思います。
 化鉱コンビナート木材コンビナート、これが地元資源を活かすための二本の柱です。

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強力な政府の資金バックアップ



 ◆新産都市建設には産業基盤の整備、厚生施設、教育施設など莫大な予算が必要だと思いますが、資金の心配はないのですか。

知事

 新産都市づくりは、新産業都市建設促進法という法律に基いて行なわれるもので、国の強力なバックアップが期待されます。
 これまでの開発計画と違って、内閣総理大臣が建設の基本方針を県知事に指示するのです。その中には工業生産額の見通しも明示されて為り、道路、鉄道、港湾などの整備方針も示されており、これに必要な公共投資の総額も盛り込まれます。
 したがって、この新産業都市建設の資金については、政府もまたその責任の一半を負うこととなるわけです。



 ◆国からどんな援助がありますか

知事

 建設計画に基いた市町村の仕事に対しては、補助金の割り増しをしてくれます。県事業に対しては政府資金を貸し、その金利の補給もしてくれるのです。ですから建設計画に基いた事業の資金確保は、これまでより大変やりやすくなるわけです。
 同時に民間企業が進出する場合にも、政府がその資金のあっせんに努めなければならないことになっております。
 また、工場誘致をする場合、優遇措置としてその工場に対して県や市町村が税金(事業税、不動産取得税、固定資産税)を減免するのが普通ですが、新産都市に指定されると、その減免した税額分を国が交付税で補てんしてくれるのです。ですから企業誘致が非常にやりやすくなりますね。



 ◆新産都市指定にともなって、いち早く土地ブローカーが動いているようですが、地価の高騰を押えるために県ではどんな対策をたてていますか。

知事

 地価の高騰を防ぐためにます第一に県自体で秋田湾地区に土地を造成することにしていますが、現在まで三十万坪造成しており、今後も大幅に増加する計画です。第二に、これは全国で本県だけが実施している制度ですが、市町村が工業誘致のため土地造成を行なう場合に、県でその資金を貸し付けることにしています。
 また、どうしても新産都市建設計画上必要な民有地がある場合には県が買い上げます。現在たしかに土地売買業者の動きは見られますが、幸い秋田湾地区の大半が国有地、市有地等の公有地で占められていますので、他地区のように極端な地価の値上りはないでしょう。しかし、地価高騰のムードは危険なので、関係市町村と一緒になって、この対策を講じてまいる考えです。


"秋田の底力"をみせる好機



 ◆秋田湾地区の工業生産規模は将来、三千五百億円の巨額を見込むといわれますが、秋田県の現状からみればあまりにも飛躍した規模のようです。はたして実現できる実力があるのでしょうか。

知事

 実力はあると思います。最近発表になった昭和三十九年度の県民所得の伸びは、全国平均を始めて上回りました。全国の所得の伸びは平均十二・四パーセントですが、本県の場合は十八・一パーセントという大変な伸び方です。一番大きな所得の伸びは農業で続いて工業、商業となっており、その農業も米だけではなく、畜産果樹の全部が伸びており、もちろん黒鉱ブームの鉱業も伸びており卸売、小売、サービス業のすべて
 の産業部門が全国平均を上回っております。十万ヘクタールの未利用地、未開発の地下資源、観光資源等が本当に軌道に乗ったら…もっとすばらしい力を発揮できると思います。あまり劣等感をもってはなりません。秋田くらい楽しみの多い県はないと思っております。新産都市を中心に、みんなの手で郷土の建設に向うんだという意気ごみを盛り上げてまいりたいものです。なんとしても一番大切なのは県民みなさまのご協力であります。ます、それには新産都市の建設が全県の全産業の発展に切っても切れない関係のあることを十分おわかりいただくことが第一でありますので、これについてあらゆる努力をつくしてまいりたいと存じます。