郷土図書室

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野添憲治・安倍甲編
 あきたの民話絵本
 ―かえる女房・外五冊―

 本県でもこれだけの出版企画ができるのか、改めてその水準の向上に刮目させられるのが、六冊セットのこの"民話絵本"である。文は、ルポライターでこの絵本の制作者(出版者のあんばい・こうと共同制作)でもある野添憲治氏をのぞく六人ともが地元の詩人たち。それぞれに意中の画家を配しての内容は
 (1)かえる女房(絵・宮腰喜久治/文・野添憲治)
 (2)さるのよめとり(佐藤待子/森川由美子)
 (3)竜のこども(照井勉/簾内敬司)
 (4)雨ごいの矢(斎藤由紀子/沢木隆子)
 (5)山どりの恩がえし(吉田竜/矢守誠子)
 (6)さた子沼(斎藤昇/小坂太郎)の構成。好きな巻だけの分売も可とのことである。
 民話ブームで類書あまた、しかも語りが重点、絵はさし絵程度といった本の多い中で、このシリーズは思いきった"絵主・文従"を意図しており、その意味では大人の鑑賞・愛蔵に堪え得る本である。
 六人の"絵師"は、先に野添氏と組んで草士文化から絵本う「犬ぼえの森」を出した宮腰氏(能代二科会)を除けば、県展選抜展で二年連続文部大臣賞の斎藤由紀子氏(秋田)がやゝ知られるほかはすべて三十代以下の新進か無名。中で佐藤待子氏のみ商業美術(二科展特賞)の分野から参加してる。
 いっぽう詩人の側も、長老級の沢木氏、重鎮小坂氏をのぞけば、最近やっと処女詩集を出したか出さないかの新進ぞろいである。
 民話の"詩化"というか、話そのものは同巧異曲をもって語られるありきたりばかりだが、極限まで文章表現を追いつめる"言葉の錬金術師"たちに郷土の民話を書かせたという漸新な試みも成功したといえよう。
(B5判三二頁・各千二百円、函入セット価七千二百円。秋田市手形新栄町2-21、無明舎出版刊)


小坂太郎
 村の子たちの詩(うた)

 《北方教育・一つの戦後》の副題がある。戦前のいわゆる「北方教育」とは直接つながらない世代に属するが、常に"北方性"を自らの思想と存在の原点・領域として三十年を一貫して郷里羽後町で中学教師の職にある著者によっていま新しい「北方教育」が実践されつつあることを本書によって知ることができよう。
 内容は、詩人(総評文学賞・小熊秀雄賞受賞)でもある著者が、転々勤務した辺地色の濃い四つの中学校(元西・軽井沢・三輪・明治=現仙道)で生徒たちに「詩」を読むこと、書くことを表現活動の一手段として――そればかりではなく、自分の生きる風土を否定しないためにも生活の現実を子どもらに認識させる目的で――指導してきた、その実践記録である。
 感性するどく生活に反応する農山村の子らの現実な偽らない詩の数々が採りあげられ、さらにはその時代的な、風土的な背景とが語られて、まさに戦後教育史の片影をみる。(たいまつ新書(39)、二三九頁・六八○円、新宿区百人町1―23―14、たいまつ社刊)


栗山文一郎解説
 田中北嶺
 戊辰戦後絵日記

 北嶺田中茂八郎(天保6―大正7)は鹿角市毛馬内の人。南部藩抱え絵師川口月嶺に四条派を学んで、師の画風を継承したといわれる画人である。戊辰戦のさいは桜庭氏の馬廻り役(身辺警護)として大館城攻略戦に従軍、その折の実見聞や体験なもとに描かれたのがこの絵日記である。
 宣戦布達文朗読の図から南部敗戦にいたる十二所での最後の対陣まで二十三場面を、単色写真版で復刻したのが本書で、戦況の推移などを地元の郷土史家栗山文一郎が解説している。
 戊辰の役に関する史書は多いが合戦の模様を実与した資料としては珍しく、絵で見ると当時の戦争の模様が生々しく伝わってくる。
 南部軍の各口に配置された軍兵名簿が付されるが、古文書の写真版そのものではなく、氏名を飜刻してくれればもっと良かった。
(A5横判総アート五三頁・千円。大館市谷地町、よねしろ書房刊)


追悼誌三題

おもかげ

 出張先で急死した当時の県町村会長、大雄村長高橋信雄氏の三周忌に際し、村内有志の発起で胸像を建設するとともに、氏の生前の功績と人となりを後人に伝えるべく編集された追悼誌(B6判二三七頁)。現村長はじめ小畑知事、笹山代議士ほかかつて交流のあった町村長、教育関係老、地域の指導者など六十二氏の文と故人の人柄を語る座談会記事からなる。


成敏忌に

 これも大館市教育長在職中に逝去した吉成成敏氏の一周忌に、後輩の教育関係者が中心に企画したもの(A5判九八頁)。教師、同窓生、教え子、遺族など三十六人が執筆、故人の人間像を浮き出させるばかりか、個人にまつわる北秋教育史の一端を伝えてくれる。
 氏の業績としては、「教育の日」を設け永井道雄元文相を招いて講演会を催した(死後実現)ことだが、多忙の永井氏を動かしたというその往復書簡が付される。


西宮伊三郎先生

 県柔道界の先覚、秋田師範柔道部をしばしば全国優勝に導いた西宮氏の二十五周年記念法要を催した教え子たちが、遺族からの謝恩の寄金をもとに企画した追悼文集。追憶記のほか、氏の略伝、年譜、遺稿(亡妻追憶記)門下の柔道部員名簿を付す。


横手郷土史資料52号

 八人による十二研究がある。主要論文は、横手三大祭りの一、旭岡山の梵天祭についての大森章氏と伊沢慶治氏の調査と写真記録。ほかに石坂洋次郎文学碑建立にさいしての記録(除幕当日の次第や記念講演の要旨)中国戦線老河口における終戦時の従軍記録、明治二十七年の横手大洪水について大山順造氏が書いて地方紙に発表したものの復刻、生の森三十三観音の由来記など。
(A5判七八百、一般頒布千五百円、横手図書館内郷土史研究会刊)