生活二法の概要と施策

[PDFファイルを表示]


 とどまるところを知らない物価の上昇。その対策として「国民生活安定緊急措置法」「生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律」のいわゆる生活二法が制定された。この法律が物価抑制にどんな役割りを持ち、まだどのように運用されているのか。

異常な物価狂乱

 昨年十二月の卸売物価は前月と比べ七・一%の上昇、この数値は昭和二十三年九月の八・二%に次ぐ高い記録という。二十三年といえば敗戦後の混乱期、主食の米はもとより、生活必需物資もなかなか手に入らなかったし、社会情勢もまだまだ安定していなかった時期である。そんな情況の中での物価高騰はある程度やむを得ないものがあったろうが、現在のような社会情勢でこれほど物価が暴騰するのは異常事態といわなければならない。こんな事態を俗に"狂乱状態"といわせるのである。
 この狂乱状態の発端となったのは、一昨年の木材、セメントなどのマイホーム建設資材の品不足からの高騰。資材が出回り始めると価格は二倍、三倍にハネ上がっており、マイホームを建築しようとする人の中には計画を断念せざるをえたかった人も出たほど。これら資材に続いて大豆、羊毛、ガーゼなどにも同じ現象が津波のように襲った。
 買占めの元凶と見られていた商社は、決算で軒並み大幅な利益を上げたことから、あくどい商法や企業モラルに厳しい批難があびせられた。
 次いで襲ったのが例の"アブラ・ショック"。九九%をアラブを中心とする海外の安い石油に依存し成長を続けて来た日木経済、それが中東戦争のぼっ発でアラブ諸国が石油を武器として使用、生産の削減、大幅値上げを声明するとたちまち大混乱に陥った。
 声明発表後、石油製品、さらにこれを二次加工する製品、燃料がいっせい値上げされた。さらに石油とは直接関係のないトイレットペーパー、チリ紙、砂糖、小麦粉などありとあらゆる生活物資にも波及。
 東京や大阪では、トイレットペーパー不足からパニック状態となり、買い争いでケガ人まで出る始末。県内ではこのような騒動は起きなかったものの、冬を迎えようとしていた時期だけに、家庭用暖房に使用する灯油の確保は切実であった。品不足の情報もあって価格はつり上げられ、昨年を大幅に上回ったほどである。
 その後も物価の上昇はおさまることなく物不足などもいわれ、かえって悪化の一途をたどる一方。このまま野放しにしていたのでは物価の鎮静、安定はとても望めないという情勢となり、ついに法によって規制したければならない事態となった。その措置として四法律が制定されたが、このうち最も国民生活に関係あるのが生活二法と呼ばれる「国民生活安定緊急措置法」=昭和四十八年十二月二十一日制定=と「生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律」=昭和四十八年七月六日制定=である。


生活二法の概要

 最初に二法のあらましをのべてみよう。
 まず国民生活安定緊急措置法は、物価の高騰や経済の異常な事態に対処するため、国民生活との関連性が高い物資および国民経済上重要な物資の価格・需給の調整などに関する緊急措置を定め、国民生活の安定と国民経済の円滑な運営を確保することを目的としたものである。そして物価が高騰、または高騰のおそれがある場合における生活関連物資、国民経済上重要な物資の価格調整、これら物資の供給不足時における需給の調整、設備投資抑制などの諸措置で物価の安定を図る。
 消費者の立場とすれば物資の価格調整に一番関心があると思うので、この点を少しのべてみよう。ある物資が高騰、または高騰のおそれがある場合、その物資に標準価格を決める。小売業者は、その指定物資について標準価格と販売価格を消費者の見やすい所に表示しなければならない。

[PDFファイルを表示]
もし表示しなかったり、標準価格を超えて販売していればその旨を指示でき、指示に従わなければ、その商店の名を公表することかできる。
 こうした措置でもなお指定物資の価格が安定しなければ、その物資に特定標準価格として定め、この価格を超えて販売した時は、その差額を課徴金として国庫に納得しなければならない。以上の二措置でまだ物資が著しく不足し、その需要の均衡を回復することが相当の期間極めて困難とみられる場合は、これら物資の割当て、または配給などが実施されることになるほか、立入検査などもできることになっている。反対に異常事態がおさまったと認められる場合は、これら一連の措置が解除される。
 一方の生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律は、国民生活との関連性が高い物資、または国民経済上重要な物資について、買占めおよび売り惜しみに対する緊急措置を定め、国民生活の安定と国民経済の円滑な運営を図ろうというものである。
 生活関連物資などの価格が異常に上昇、上昇のおそれがある場合、または買占め、売惜しみのおそれがある場合は、その物資を特定物資に指定し、生産、輸入、販売の事業者にその業務の報告をさせたり、事務所、工場、店舗、倉庫などに立ち入り、帳簿、書類などの検査ができる。買占め、売惜しみの事実があれば、売り渡しを指示できもしこれに違反したり虚偽の報告、立ち入り検査をこばむなどすれば、罰則が適用される。
 すでに二法とも施行令、施行規則により次のものが標準価格、特定物資に指定されている。

 標準価格(国民生活安定法)
 (1)灯油=十八リットルカン入り正味量で店頭売り三百八十円。
 (2)液化石油ガス(LPG)=十キロボンベ入りで配達費用を含み千三百円。
 (3)ちり紙=八百枚(正味七百グラム)一組で二百三十五円。
 (4)トイレットペーパー=古紙を原料としたものは五十五メートル四個(正味五百4)で二百二十円、六十五メートル(正味五百八十4)四個で二百四十円。パルプ原料は六十メートル(正味五百四十4)四個で二百四十円。

 特定物資(買占め売惜しみ防止法)
 (1)大豆(2)大豆油(3)大豆油カス、しょうゆ、精製糖(4)丸太(5)製材(6)合板、印刷用紙、ティシュペーパー、京花紙、ちり紙、トイレットペーパー(7)綿糸(8)綿織物(9)医療用ガーゼ(10)羊毛(11)杭毛糸(12)杭毛織物(13)生糸(14)絹織物(15)揮発油(ナフサを除く)、灯油、軽油、重油(16)液化石油ガス(17)合成洗剤、以上十七分類二十七品目。

[PDFファイルを表示]
始動した生活二法

 この二法の権限は地方公共団体の長に委任され、県でも実際の監視、指導、業務を開始。国民生活安定法関係では、すでに価格調査員を発令。専任三十八人、兼任二十人の合計五十八人、このうち県内九支部(地方総合庁舎)に二十六人が配置されている。最初の仕事として先月十二日から十五日までの四日間、消費者から苦情が寄せられた店など県内八十一店で調査、指導をかねて四品目の価格調査を実施した。
 この調査では灯油はほとんどの店で守られており、標準価格を上回っていたのは、わずか一店だけ。反対にちり紙は三十四店中二十店がオーバーして販売、価格改定の指導を受けている。
 買占め売惜しみ防止法では、指定二十七品目のうち、とりあえず大豆油、家庭用薄葉紙(チリ紙、トイレットペーパーなど)、灯油、石油液化ガス、合成洗済、精製糖、しょう油の七品目を重点に流通調査を実施中。対象は従業員十人以上の問屋、流通上影響力の大きいメーカー、御業者約百十店。
 今回は関係業者への法の趣旨説明と価格操作、買占めがないかなどの調査協力というかたちをとっているが、調査結果では品目の入荷、出荷、決算報告を調べ、流通の実態を明らかにすることに、流通に大きな影響を持つ業者には、毎月品目別の入荷出荷状況を報告させ、今後の物資の動きを追跡することにしている。
 こうした二法の委任業務の遂行とともに、これと並行し県も独自の対策も進めている。これまで六十人であった物価調査員を四十九年度から消費者モニターと名称を変更し、人員も百七十六人にふやし生活関連物資などの需要および価格の動向、把握に努める。
 また、新たにテレフォンサービスによる迅速で正確な物価情報の提供も実施、現在番号の選定を急いでいる。県民生活課には経済企画庁、国民生活センターを結ぶテレファックスも配置されており、今後これらから得た情報のほか、地域に即した情報がセットされ電話を通じてどんどん流されることにたろう。


消費者パワーの発揮を

 生活安定法、買占め売惜しみ法が施行され、すでに二カ月を経過しようとしている。この間、経済情勢は当初と大きく変わってきた。公正取引委員会が石油元売り十二社石油連盟などを告発するというセンセーショナルなニュースや卸売業者の売惜しみ、大手メーカーの価格操作といった事実が続々と明かるみに出てきた。
 原油は業界のいうように落ちこみもなく、昨年の九月の水準を維持していたというし、値上げ前の安い原油で作られた製品は、石油危機にまぎれて値上げを見込んだ価格で売られ、これが他の大部分の商品に波及し便乗値上げされた。
 通産省は原油価格の上昇が各産業にどのくらい影響を与えているかを、発表しているが、それによると十二月と比べ原油価格が二倍に上がった一月と比較しても、大幅に製品にハネ返っているのは石油製品の五九%、有機化学薬品一六・一%、セメント一五・五%など、ごく一部のもの、狂騰した砂糖、紙などはわずかに三・五%、五・六%にすぎない。ほとんどのものが先取り、便乗値上げであることがはっきり裏付けられた。
 生活安定法で指定された四品目も、品物が出回るにつれて標準価格が高値安定のかたちとなり、値下げ、値くずれを防止する格好となっていたり、灯油のように十八リットル三百八十円と決められても、配達料の操作で実質的に値下げにならないという例もある。
 こんな異常事態の中で、消費者としても生活防衛のため現状をよく注視し、物価高騰に積極的に対処する必要がある。悪徳業者の監視、値下げ運動、生活協同組合の充実、物価間題の勉強…こうした活動を通じ消費者パワーを発揮すれば、物価抑制に大きな力となることは必至である。
 また、いっぽう今回の事態は私たちに物を大切にしなければならないということを教えてくれた。

 これまで私たちは、消費は美徳"などの言葉に踊らされ、大量消費を続けてきたが、資源保護の立場からも、ここでこれまでの使いすてを反省し、正常な消費生活について消費者一人一人が真剣に考えてみるのも意義のあることではないだろうか。