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語りを聞く

町おこしの仕掛け人 山内貴範さん

画像:町おこしの仕掛け人 山内貴範さん

 埋もれた資源の発掘と新旧文化の融合

 
 堀回がある羽後町、といえば、美少女イラストでの町おこしで有名です。その仕掛け人が、堀回元城地域出身の山内貴範さんです。
 
 「自分を“オタク”だとは思っていない」と山内さんは言います。実際、山内さんは建築などに深い造詣があり、個人ページの建築物データベースは質、量ともに特筆すべきものがあります。

一方で、美少女イラストでの町おこしがよく取り上げられますが、最初に町おこしの発想を得たのは、埋もれている羽後町の「資源」でした。イラストありきではなく、「資源」があるからこそ、美少女イラストを組み合わせた新しい価値を作り出すことができたのです。
 
 山内さんの活動のキーワードとして「埋もれている資源の発掘」「新旧文化の融合」があります。

その出発点は秋田の風土でした。堀回にある元城地域で生まれ育った山内さんは、県外に出て自分の地元の価値、つまり「埋もれた資源」に改めて気付いたと言います。

白川郷に旅行に行ったときには、茅葺き屋根の並ぶ街並みを見て、「こんなのは、地元にいくらでもあるじゃないか!」。つまりは羽後町にも「埋もれている文化・資源」がたくさんあることに気づいたのです。
 
 もうひとつのキーワード「新旧文化の融合」については、発想の原点が、山形県にある旧鶴岡警察署庁舎を見たときでした。和洋折衷様式の建物は「擬洋風建築」と呼ばれていました。しかし見よう見まねの「擬」と言うにはあまりに計算しつくされた和と洋の融合に山内さんは衝撃を受けます。新しいものを吸収した、洋風にとどまらない日本独自の建築様式が出来上がっていたのです。
 
 美少女イラストを使った学習塾の宣伝チラシなどを手掛けていた山内さんは、羽後町のお祭り「かがり火天国」でイラストコンテストを企画します。羽後町の伝統文化である「西馬音内盆踊り」と新しい文化「美少女イラスト」の融合を試みたこのコンテストは、県外からも反響を呼び、香港からの応募もありました。もちろん、県内からの応募も多数あり、かがり美少女コンテストは、クリエイターの作品発表と育成の場ともなりました。

なぜ、美少女イラストを使ったイベントを企画したのでしょう? それは、小学校のころからの「自分の好きなこと」であり、美少女イラストでは一般受けはしないという考え方への反発であり、その答えが美少女イラストを使った一連の町おこしでした。
 
 山内さんはコンテストの成功を受けて、「埋もれている資源」を掘り起こし、地域の伝統文化との融合、そこから生まれる新しい価値を目指して、観光ポスターよりもミニサイズの、コレクション用ポスターとして地域の文化財や施設、イベント等と美少女イラストを組み合わせたポスター「スティックポスター」を作り始めます。

イラストレーターにも、それぞれ得意分野に合わせて「花嫁道中」「あぐりこ神社」などを依頼します。飛び込みのお願いにもかかわらず、たくさんのイラストレーターが参加したポスターが完成しました。

パッケージやロゴ、解説文に地元の方たちの作品や文章を使うことで、新旧文化が融合された「スティックポスターin 羽後町」が完成します。このスティックポスターは、その後古民家ポスターなども発売されるヒット商品となりました。
 
 堀回地域を題材にしたポスターは「石馬っこ」「元城のケンポナシ」「旧羽後交通雄勝線」「元城神明社の銀杏」「ゆきとぴあ七曲花嫁道中」など。さらに飯沢集落の「鈴木家住宅と染付蔵」「沢の子の杜 わか杉」などにも及び、今ではポスターの絵に描かれた場所を訪れる人も増えています。
 
 しかし、「美少女イラストを付ければ売れる」と全国で安易な商品が出回り始めたことに、山内さんは心配しています。
羽後町での成功は美少女イラストの魅力だけではなく、「埋もれていた資源を発掘」し「新旧文化を融合」させたことにありました。美少女イラストという「自分が好き」なことと、ふるさとの文化にこだわったからこそのヒット企画と言えるでしょう。
 
■関連サイト
 
 
■参考文献
『町おこしin羽後町~美少女イラストを使ってやってみた~』
『スティックポスター in 羽後町』
2010年8月掲載

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