画像:沼エビ

 にかほ市・冬師集落の南には約260ヘクタールにおよぶ広大な冬師湿原があります。鳥海山の大噴火による山体崩壊で押し寄せた岩石が河川をせき止め、湿地帯や無数の湖沼が生まれたと考えられています。

 冬師・釜ケ台地域では、こうした湖沼がもたらす恵みを上手に生活に取り入れています。

 紅葉の頃、集落のお母さんたちが胴長靴をはいて、沼へと入っていく姿が見られます。お母さんたちの目的はこのあたりでは「沼エビ」と呼ばれる、体長1cmほどの小さな淡水性のエビです。

 お母さんたちは、ザルを何度も何度も水中に入れては、小さな「沼エビ」を少しずつすくっては、バケツに集めます。冷たい水の中での作業となるため、大変貴重な食材といえます。

 苦労して採集したその沼エビ、サッと塩茹ですると透明感のある身が真っ赤にかわり、エビ独特の香ばしいかおりが漂います。それをあっさりとした大根おろしとからめると、冬師集落ならではの珍味の完成です。爽やかな大根おろしの風味の中、プチプチとはじけるエビの旨味は、冬師集落に伝わるご馳走のひとつです。

平成23(2011)年4月掲載

こちらの記事もおすすめです

釜ケ台番楽

    釜ケ台番楽の始まりは、今から約400年前に京都の修験僧「本海行人」が伝えたとされています。鳥海地区を中心に広がる「本海流番楽」の流れをくみ、冬師(とうし)、伊勢居地(いせいじ)などの番楽と共通点が見られます。    舞は神...

伝統行事・イベント

郷土芸能

釜ケ台自治会

 江戸時代初期慶長年間(1596年~1615年)、釜ケ台集落の開発が本格的に始まります。そこから面々と続く新田開発が歴史そのものともいえる釜ケ台集落では、その先人たちの苦労を偲ぶためなのか、「先輩」という言葉をよく耳に...

地域活動

地域団体

アンコウのとも和え

   鳥海山麓に位置するにかほ市・冬師集落には、昔から行商が海の幸を運んできました。集落の側にある仁賀保高原を越えると日本海に通じるこの立地条件が、山村でありながら魚介類が手に入りやすい環境に一役かっていたようで...

郷土料理