秋田を味わいたい!

あきたの鍋シリーズ うさぎ汁

 から30年程前までは、冬ともなると肉屋や魚屋などの軒先に、毛がついたままの野うさぎがぶら下がっていた。かつて雪深い地方で野うさぎは冬期間の貴重なタンパク源で、うさぎ料理はごちそうだったという。特に鳥海山麓一帯はうさぎが多く、鉄砲やワナでうさぎを獲り、それを売って生活していた人も多い。ウサギ1羽の値段は、日雇い仕事の約半日分。1日に3羽も獲れば日雇い以上のいい稼ぎになった。

 近はうさぎの数も鉄砲でうさぎを獲る人もめっきり少なくなってしまったが、野うさぎの需要はけっこうあるという。

「あちこちがらうさぎが獲れたら売ってけれって頼まれでるども、最近は難しいな。数が少ねぐなってるものなぁー」と鳥海町に住む70代の鉄砲撃ちは言う。この鉄砲撃ちに昔ながらのを作ってもらった。

 をはいだうさぎから内臓を取り出し、頭、胴体、足と切り分ける。肉の多い胴体はナタでブツブツと切り分ける。後足は包丁で肉の部分だけを切り取る。鉄砲撃ちは残された頭と後足の骨を金属の台に乗せ、ハンマーでたたき始めた。

 「田市の方の鉄砲撃ちは後足の骨も頭も捨てるようだども、ここでだば昔からたたいてダンゴにして食ってるんだ。まあ、最低3時間はたたく。骨だって、もってね(もったいない)がらな…」と鉄砲撃ち。

 

 ンマーで丹念にたたきつぶした後は、ナタの歯で端から順にたたききざみ、それを何度も繰り返す。ひき肉のようになったら家の中に持ち込み、一晩水に漬けておいた大豆と一緒にすり鉢に入れ、これまた丹念にする。途中で味噌と卵、小麦粉を入れトロトロになるまですりこぎを動かす。

 れをダンゴ状に丸め、醤油で味を調えた汁に大根や人参、ゴボウなどと一緒にコトコト煮込む。「これに焼いたモチを入れれば、正月のぞう煮。昔だば、ほとんどの家でを作ったんだ」

 さぎは淡白な味で、わずかに野生動物の香りがした。3時間近くもたたいただけあって、骨もほとんど気にならない。このうさぎたたきは吸い物の椀種としても使われ、縁起の良い食べ物といわれている。また、内臓は別の料理法で残さず食べるという。

 


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 「なのめったに食える時代でねがったから、骨もスジも捨てねで、大切に食べたもんだ。捨てるのはツメくらいだべ」。これなら撃たれたうさぎも成仏できるというものだ。

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